近年、SaaSやECサイト、各種Webサービスでの標準的な決済プラットフォームに成長したStripe。大変便利な反面、会計システムへの連携がうまくいかず、現場では毎月の売上計上・決済手数料の分離・売掛金の消込作業…etcと、正しい経理作業のために膨大な工数が奪われるケースがあります。
Stripeのデータを会計データへ変換・自動化するアプローチは、取引件数や運用体制によって適した方法が大きく異なります。
本記事では、Stripeデータの構造的な課題から、会計ソフトへの2つの連携方法(API連携とCSVインポート)のそれぞれの特徴・メリット・適正規模、マネーフォワード クラウド会計での具体的な運用方法までを俯瞰して解説します。
Stripeではどのようなデータが生成されているのか?
Stripe内部では、単なる「誰が、いつ、いくら払ったか」だけでなく、決済・手数料・銀行振込(入金)に関する一連の売上履歴データが「Balance Transactions(残高変動明細)」として管理されています。
具体的には、1回の決済ごとに以下の要素が保持されます。
| 項目名 | Stripeでの名称 | 内容 | 例(10,000円の決済時) |
| 売上総額 | Gross (Amount) | 顧客が支払った合計金額 | 10,000 円 |
| 決済手数料 | Fee | Stripeに支払う決済手数料 | 360 円(国内カードの標準料率3.6%の場合) |
| 純額(差引額) | Net | Stripeアカウント残高に追加される純額 | 9,640 円 |
| 振込ID | Payout | 複数取引が束ねられて銀行口座へ入金される単位 | 振込日・振込合計額 |
Stripeからは「売上データ(Charges/Invoices)」と「残高移動データ(Balance Transactions)」、「銀行振込データ(Payouts)」が出力されます。
なぜStripeデータを「そのまま」会計データとして利用できないのか?
StripeのCSVやAPIデータをそのまま会計ソフトに読み込ませようとすると、以下の4つのハードルに突き当たります。
銀行口座への入金額≠売上高 (手数料自動控除)
Stripeから銀行口座に入金される金額は、「売上総額(Gross) – 決済手数料(Fee)」の差額(Net)です。 明細だけを見て「9,640円 入金 = 売上9,640円」として仕訳を切ってしまうと、売上高が過少計上され、支払手数料(費用)を計上漏れしてしまいます。
なお、決済手数料の消費税区分は手数料の種類によって異なります(カード決済手数料は一般に非課税、Stripe Billing等の追加サービスの手数料は課税など)。Stripeの請求書・明細で確認のうえ、税区分を設定してください。
決済発生日と銀行振込日のタイムラグ
Stripeの振込は通常「数日〜1週間分の売上(Net額)」が一括で束ねられて入金(Payout表記)されます。そのため、個別の取引データと銀行口座の入金額を突合(消込)する作業が非常に煩雑になります。また、Payoutの金額には返金や不審請求の申し立て(チャージバック)による減額、Stripe Billing等の手数料の差し引きも含まれるため、「期間中の売上Net合計=入金額」とは限りません。
- 決済発生時: 売上高(Gross)と売掛金(Net)、支払手数料(Fee)の発生
- 銀行振込時: 銀行口座への入金と売掛金(Net)の消込
返金(Refund)や不審請求の申し立て(チャージバック)
キャンセルによる返金が発生した場合、返金データがマイナス要素としてBalance Transactionsに混ざります。なお、返金してもStripeの決済手数料は返還されません(コンビニ決済・銀行振込の返金では、別途返金手数料もかかります)。チャージバックの場合も売上の取消・引落しとして処理し、申し立ての内容によってはネットワーク手数料が発生することがあります。これらを通常売上と区別してマイナス仕訳や売掛金の相殺処理を行う必要があります。
海外ユーザー決済における消費税区分の混在
海外ユーザーからの決済には日本の消費税(課税売上10%)ではなく、取引内容に応じて「不課税(国外取引)」または「免税(輸出免税)」が適用されるケースがあります。たとえば、SaaS等の電気通信利用役務を国外の顧客に提供する場合は国外取引として不課税、それ以外の非居住者向けの役務提供や物品の輸出は輸出免税となるのが一般的で、両者は課税売上割合の計算上の扱いも異なります。これらを自動化またはルール化して税区分を振り分けないと、消費税の申告漏れ等につながるリスクがあります。なお、Stripe Taxは顧客所在地に応じた税額の計算・徴収を行う機能であり、日本の会計上の税区分を判定するものではないため、Stripe Taxの利用有無にかかわらずこの整理が必要です。
会計データに連携する2つのアプローチ(API or インポート)
Stripeの取引データを会計ソフトに取り込む方法は、大きく分けて2つのアプローチが存在します。
【アプローチ A:API連携(リアルタイム / iPaaS活用)】
Stripe API → (iPaaS / 連携プラグイン) → 会計ソフトAPI(自動登録)
【アプローチ B:CSVエクスポート・変換インポート(一括処理)】
Stripe管理画面 → CSV出力 → (変換ツール/Excel) → CSV仕訳インポート
アプローチ A:API連携(自動連携)
Stripeと会計ソフトのAPI(システム同士を繋ぐ窓口)を直接接続する手法です。Stripeで決済や返金が発生するたびに、中継ツール(Make、Zapier、Yoomといったツールや自社で構築したシステムなど)が間に入り、仕訳データを自動で組み立てて会計ソフトへ即座に送信します。
- メリット: 手作業をほぼ削減でき、リアルタイム性に優れる。
- デメリット: 連携設定やAPIエラーのチェック、例外処理のロジック構築が必要。
アプローチ B:CSVエクスポート・変換インポート
Stripeの管理画面から月次の取引明細データ(Balance Transactions)をCSV形式でダウンロードし、スプレッドシート(GAS)やExcel等で会計ソフト専用のフォーマットへ変換して一括取り込みを行う手法です。
- メリット:システムの高度な開発が不要で、手動で特殊な補正を加えたりすることが容易です。
- デメリット: 毎月CSVのダウンロード&変換作業という一定の作業工数が発生します。
マネーフォワード クラウド会計(MF会計)での実際の取り込み・運用方法
ここでは、実務でよく利用されるマネーフォワードクラウド会計(MF会計)での具体的な取り込み・仕訳運用のアプローチを解説します。
方法1:MF会計の「Stripe連携機能(API)」を使う場合
MF会計には標準でStripeとの連携機能が備わっています。
- データ取得: MF会計のメニュー「データ連携」よりStripeアカウントを連携。
- 取得される明細: Stripeの売上明細・手数料・振込明細が「入出金明細」に自動取得されます。
- 自動仕訳ルールの設定:
- 売上時: 勘定科目「売上高」、相手科目「売掛金(または未収金)」
- 手数料時: 勘定科目「支払手数料」、相手科目「売掛金」
- 銀行振込時: 銀行口座の入金に対して「売掛金」の消込仕訳を適用
但し、件数が増えるとMFの連携明細画面(未仕訳一覧)が多く生成され、確認・登録作業が重くなるケースがあります。大規模な場合は方法2の「一括仕訳CSVインポート」が推奨されます。
方法2:CSV変換による「一括仕訳インポート」を行う場合(大量取引向け)
大量の決済が発生するサービスでは、月次で集計・集約した仕訳データを作成し、「各種CSVインポート > 仕訳帳インポート」機能を利用するのが推奨されます。
1. Stripeから取引明細をCSV出力
Stripe管理画面の「レポート」から、会計処理用のレポートをCSVでダウンロードします。Stripe残高を月末で照合する場合は「残高レポート」、入金(Payout)単位で照合する場合は「入金照合レポート」が適しています。いずれも期間を指定してCSV形式で出力でき、金額は外貨換算後の入金通貨(円)で表示されます。
2. MF会計用のインポート用CSVを作成(自動変換プログラム等)
Stripeのデータを元に、MF会計のインポート形式(日付、借方科目、借方金額、貸方科目、貸方金額、摘要など)へ組み換えます。
【実際の仕訳データイメージ(仕訳形式)】
① 日次の売上・手数料発生仕訳(売上ごとに計上、または日次集計)
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要・メモ |
| 売掛金(Stripe) | 9,640 | 売上高 | 10,000 | Stripe売上 (Gross) |
| 支払手数料 | 360 | Stripe決済手数料 (Fee) |
② 銀行入金(Payout)時の消込仕訳
Stripeから銀行へ実際に着金した際(例:1,000,000円入金)、通帳連携から以下の仕訳を連携します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要・メモ |
| 普通預金 | 1,000,000 | 売掛金(Stripe) | 1,000,000 | Stripe振込入金(Payout消込) |
※補助科目として「売掛金:Stripe」を事前に設定しておくことで、Stripe残高と会計上の売掛金残高の一致がひと目で確認できるようになります。なお、Payoutには返金やチャージバックによる減額も含まれるため、①の仕訳に加えて返金・チャージバックの仕訳も計上しておかないと、両者の残高は一致しません。
まとめ:Stripe×会計自動化で「本業」に集中できる環境を
Stripeのようなクラウド決済は非常に便利ですが、事業拡大に伴う取引数の増加により、経理コストも膨らんでしまいます。
Stripeの構造を正しく理解し、適切なAPI連携やCSVインポートの仕組みを作ることで、取引件数が100件から10,000件に増えても経理の手間が変わらないスケーラブルな体制を作ることが可能です。
弊社では、Stripeをはじめとする各種クラウド決済と会計ソフト(マネーフォワードクラウド)の自動連携・バックオフィス構築支援を行っております。 「Stripeの仕訳や消込を自動化したい」「MF会計へのスムーズな取り込みフローを作りたい」とお悩みの事業者様は、お気軽に[お問い合わせフォーム]よりご相談ください。
